啓源会計事務所(公認会計士・税理士)

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シンガポール税務上の居住者と非居住者(上)

シンガポールは世界の中で最も個人所得税率が低い国の一つです。シンガポールの個人所得税の納税者は税法上の居住者と非居住者に区分され、かつ異なる税率と計算方法が適用されます。従って、個人がシンガポールの税法上の居住者と判定されるかどうかはシンガポールでの税金負担に影響を及ばす要因です。


税法上の居住者の個人所得税は、前年度の所得から所得控除を差し引いてから累進課税方式で算出され、税率が2%~22%です。税法上の非居住者は所得税の軽減免除がなく、22%の均等割の個人所得税率が適用されます。なお、シンガポール源泉の給与所得は15%の均等割の税率、またはシンガポール税法上の居住者に適用される累進税率のいずれか高い方に準じます。詳細は下記をご覧ください。


シンガポール税務上の居住者


1. 税務居住者の判定


ある特定の賦課年度において、以下の条件のいずれかに該当する者はシンガポールの税務居住者と判定されます。
(1) シンガポールに居住するシンガポール市民(SC)と永住者(SPR)
(2) 年間183日以上シンガポールに居住する外国人(会社の取締役を除く)
(3) 連続した2年度内に183日以上シンガポールに居住し、かつ当該2年度をまたぐ関連雇用契約書を持つ外国人
(4) シンガポールに継続して3年間居住する外国人


2. 個人所得税の計算方法


シンガポール居住者である個人納税者は、その課税所得に適用される税率をかけて所得税額を計算します。課税所得の金額は、課税される純所得です。納税者は下記の公式に基づいて所得税額を算出することができます。
課税所得Taxable Income
= 総所得Income – 支出・経費Expenses – 寄附金Donations – 人的控除Personal Reliefs
= 法定所得Statutory Income – 寄附金Donations – 人的控除Personal Reliefs
= 控除前の課税所得Assessable Income – 人的控除Personal Reliefs 


3. 所得税率


税務上の居住者の所得税額は前年度の所得から所得控除を差し引いて累進課税方式で計算されます。適用される所得税の税率は2%から22%までです。2019賦課年度には、個人所得税の50%のリベート(上限額が200Sドル)が与えられました。


4. 免除額


シンガポールにおける税務上の居住者に対して、個人所得税の免除額が毎年20,000Sドルです。年間課税所得が20,000Sドル以下の場合には、税率はゼロとなります。納税者は年間課税所得の20,000Sドルを超えた分だけに対して、適用される税率をかけて課税額を計算する必要があります。


5. タックスリベート


シンガポールにおける税務上の居住者は、子供の養育費、職業訓練費用、保険料及び積立金の納付に対して個人所得税のリベートを享受できます。納税者は確定申告を行う時に個人の状況によって個人所得税のリベートを申請することができます。


5.1 受講料等控除(Course Fees Relief)


受講料等控除は、個人能力または職業上の関連技能、知識を向上するために、セミナー、会議又はコースに参加する被雇用者によって利用されるものです。理工学部または大学で勉強しているフルタイムの学生、ワーキングホリデーまたは工業実習に参加している学生、または娯楽目的のコースは当該控除項目を申請できません。


参加するコースを通じて獲得した技能は必ず現職の仕事または業界にある分野に関わるものでなければなりません。コースを提供している教育機構は会計企業規制庁(ACRA)に登録しなければなりません。コース、セミナー及び会議の数を問わず、納税者は年間で最大5,500Sドルの受講料等控除を申請できます。


5.2 CPF現金補填控除(CPF Cash Top Up Relief)


納税者はシンガポールの身分証明書を有し、且つ納税者本人または雇用主が積立金の最低保管預金制度に基づいて退職口座に現金を補填しますと、CPF現金補填控除を申請できます。納税者は、その祖父母、両親、配偶者又は兄弟姉妹の前年度の年収が2,000Sドル未満の場合、彼らのCPFの最低保管預金額を補填した後、追加の控除を申請できます。


タックスリベートの金額はCPFの現金補填額に基づきますが、個人および世帯のリベートは年間7,000Sドルを超えません。当該リベートは中央積立基金庁の記録によって自動的に操作されているので、納税者による申請が不要です。


5.3  CPF拠出金控除(CPF Relief)


雇用されるシンガポール市民または永住者は従業員拠出分、または批准された退職基金または福祉基金に納付した金額に対してCPF拠出金控除を申請できます。リベートの上限は17ヶ月分のCPF拠出金額です。CPF拠出金の上限は毎月6,000Sドルです。納税者はAIS (Auto-Inclusion Scheme)と呼ばれる電子申告制度に参加しましたら、当該タックスリベートは自動的に控除され、申請・提出が不要です。


5.4 勤労所得控除(Earned Income Relief)


納税者は前年度に仕事、年金、投資貿易、商業活動、専門又は職業による収入を得た場合、勤労所得控除を享受できます。当該リベートは納税者の実際の収益によって自動的に与えられ、その上限が1,000Sドル(55歳未満)、6,000Sドル(55歳以上59歳以下)および8,000Sドル(60歳以上)です。納税者は身体的又は精神的な障害により就労することに影響がある場合には、リベートの上限は4,000Sドル(55歳未満)、10,000Sドル(55歳以上59歳以下)および12,000Sドル(60歳以上)まで引き上げられます。


5.5 障害者の兄弟姉妹扶養控除(Handicapped Brother/Sister Relief)


納税者は前年度においてシンガポールに同居している自分または配偶者の障害者(精神的・身体的)である兄弟・姉妹を扶養する費用は2,000Sドル以上の場合、当該控除を申請できます。もしその他の人がすでに当該障害者である兄弟・姉妹に対する当該控除を申請しましたら、納税者は追加申請できません。納税者は障害者である兄弟・姉妹に対する1人当たり5,500Sドルの控除を申請することができます。


5.6 両親・障害者の両親扶養控除(Parent/Handicapped Parent Relief)


納税者は前年度において自分または配偶者の両親、祖父母又は曽祖父母を扶養する費用が2,000Sドル以上の場合、当該控除を申請できます。身体障害又は精神障害がない被扶養者は前年度において満55歳でなければなりません。なお、被扶養者は前年度における所得が4,000Sドルを超えてはいけません。


同一被扶養者に対する当該控除を申請するその他の納税者がいる場合、納税者全員は控除額の割り当てについて合意に達した後に各自で申請する必要があります。


両親扶養控除-両親と同居する場合(9,000SGD)- 両親と同居しない場合(5,500SGD)
障害者の両親扶養控除-両親と同居する場合(14,000SGD)-両親と同居しない場合(10,000SGD)


5.7 有資格者・障害者の子供扶養控除(Qualifying/Handicapped Chid Relief (QCR/HCR))


納税者は未婚の子女が16歳未満またはフルタイムで通学している場合、有資格者である子供に対する控除(QCR)を申請できます。納税者はその子女が未婚の身体障害者又は知的障害者であり、且つ前年度の所得が2,000Sドル未満の場合、障害者の子供扶養控除(HCR)を申請できます。資格を満たす子供控除は1人当たり4,000Sドルであり、障害者の子供控除は1人当たり7,500Sドルです。


資格を満たす子女の扶養控除(QCR)と障害者の子女の扶養控除を同時に申請することができません。1人の子女に対する控除申請は有資格者の子供控除又は障害者の子供控除のいずれか一つだけを選択できます。夫婦は控除額を共有できます。


5.8 予備役兵控除(NSman Relief (Self, Wife & Parent))


予備役兵を表彰するために、フルタイムの兵役を終えた全ての予備役兵は予備役兵控除を享受できます。控除額は予備役兵が毎年訓練又はその他の活動に参加するか、重要な指揮者を担当するか、又は重要な役割を担うかによります。控除額の範囲は1,500から3,000Sドルまでです。


なお、予備役兵への支持を感謝するために、予備役兵の妻及び各両親に対する控除はぞれぞれ750Sドルを享受できます。予備役兵である子女の人数に関わらず、両親1人当たり最高750Sドルの控除を享受できます。当該控除は国防省の記録に基づき自動的に与えられますので、申請が不要です。


5.9 就業女性の子供控除(Working Mother's Child Relief(WMCR))


既婚・別居・離婚または配偶者と死別した母親は就業している場合には、その子女がシンガポール市民であれば、有資格者の子供控除(QCR)と障害者の子供扶養控除(HCR)のほか、就業女性の子供控除も享受できます。


2009年賦課年度より、就業女性の子供は母親の総収入の15%(1人目の子供)、20%(2人目の子供)、25%(3人目及びそれ以降の子供)相当額の控除を享受できます。子供全員の就業女性の子供控除(WMCR)の合計額は母親の収入の100%相当額を超えてはいけません。有資格者・障害者の子供控除(QCR/HCR)及び就業女性の子供控除(WMCR)の合計額は最高50,000Sドルです。


5.10 祖父母扶養控除(Grandparent Caregiver Relief)


自分・夫・前夫の両親又は祖父母に12歳以下の子供の世話をしてもらった就業母親(既婚・別居・離婚または配偶者と死別したことにかかわらず)は、3,000Sドルの祖父母扶養控除を享受できます。但し、既に他の人に同一両親又は祖父母に対する当該控除を申請されている場合には、就業母親は当該控除を追加申請できません。また、両親又は祖父母は前年度において投資貿易、商業活動、就労を行ってはいけません。


5.11 外国人メイド控除(Foreign Maid Levy Relief (FML))


既婚・別居・離婚または配偶者と死別した女性納税者は、前年度において外国人メイドを雇用しましたら、外国人メイド控除を享受できます。納税者は自分または夫がメイド税(Maid Tax)を支払った場合、外国人メイド1人につきメイド税の2倍相当額の控除を申請できます。


5.12 配偶者・障害者の配偶者控除(Spouse/Handicapped Spouse Relief)


別居中の妻の前年度における生活費(扶養料・離婚後扶養料を含む)が夫によって支払われ、且つその収入が4,000Sドルを超えない場合、夫は「妻控除」を享受できます。妻控除の金額は最大2,000Sドルです。合法的な別居者も当該控除を享受できますが、控除額が実際の支出によって、最大で2,000Sドルを超えません。


障害者の配偶者控除は最大5,500Sドルです。納税者は障害者の配偶者控除、または他の人に当該妻・前妻の名義で当該控除を申請された場合、当該控除を追加申請できません。


5.13 生命保険料控除(Life Insurance Relief)


納税者は前年度の積立金の残高が5,000Sドル以下の場合、自分または妻が購入した全ての生命保険に対する保険料控除を申請できます。最高控除額は5,000Sドルと積立金納付額の差額、または保険金の7%、または払い済みの保険料のいずれか低い方に準じます。


5.14 補足退職スキーム(Supplementary Retirement Scheme, SRS) 控除


納税者は補足退職スキーム(SRS)の口座を開設しますと、控除を享受できます。当該控除は納税者のSRSに基づき自動的に控除され、申請が不要です。SRSの控除額は納税者の絶対収入の15%相当額、且つ絶対収入が17ヶ月分のCPF納付給与の上限を超えてはいけません。


現在、積立金の納付給与の上限は1ヶ月あたり6,000Sドルです。即ち、毎年の絶対収入は102,000Sドルを超えてはいけません。SRS控除額は最大15,300Sドルになります。



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